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人類の起源をめぐる神々の虚構と虐殺:OAHSPEの世界観を読み解く
光を掲げたはずのアフラが起こした虐殺
紀元前7,000年ごろ、神クトゥスクは地上に闇が訪れるたびに人類が堕落していくのを憂い、創造主を僭称して状況の打開を試みました。このとき、「アフラ」と名乗る神は、自らを光の源として信徒に崇めさせようとし、真の創造主への信仰を妨げる行動に出ます。
彼は、聖人ザラツゥストラと神イフアマズダが編纂した、地球最初の聖書から創造主の名を「アフラマズダ」に書き換え、教義そのものを歪めました。けれども改竄は完璧ではなく、最終的には真の創造主を信仰する者たちを根絶やしにするという残虐な手段に出たのです。
これが、当時世界各地で発生した宗教的大虐殺の実態でした。
復讐を誓ったアヌハサジと1,000年戦争の始まり
アフラの腹心だったアヌハサジは、アフラが地獄に堕ちた際に共に落ち、改心することなく復讐を誓いました。表向きには創造主への忠誠を示しながら、裏では神々への反逆を着々と進めていたのです。
紀元前3,850年頃、アヌハサジは天界「マイトライアス」の主上神となります。この天界はアフラの反乱に対する前線基地として設置された要所でした。アヌハサジはこの地で地球の闇に対抗する者たちの不満と手を結び、ついに地球の神々に対して反旗を翻します。
この出来事が、OAHSPEで「1,000年戦争」と呼ばれるアヌハサジ(デユス)の反乱です。
デユスが語った偽りの創造神話
理念を掲げて反乱したアフラと異なり、アヌハサジは統率のために「自らを創造主と偽る」という手段を選びました。しかし人間を創造できるのは本来、唯一の創造主ジェホヴィだけです。そこで、デユスはその矛盾を埋めるため、1つの神話を創作します。
この物語は、OAHSPE第24書「対ジェホヴィ戦争の書」第29章に記されています。
デユス創作の創造神話(要約)
- 天地創造と人間の誕生
主上神が土から人間(アス)を創り、鼻から命の息を吹き込みます。草木や「エデン(スペア)」と呼ばれる楽園が整えられ、人間に自由と労働が与えられました。「知識の木」と「生命の木」に触れることは禁じられます。- 女の創造と禁忌の破り
アスから女(ウィイット)が創られ、同じ掟が与えられます。しかし彼女は蛇(欲望の象徴)に唆され、知識の木の実を食べ、アスもそれに続きます。罪の意識に目覚めた2人は隠れ、神に叱責されて楽園を追放されました。- カインとアベルの系譜
アスとウィイットは2人の息子、カインとアベルを授かります。神に供物を捧げた際、アベルだけが受け入れられたため、怒ったカインは弟を殺します。神はカインを呪い、額に印を与え、彼は闇の地「ノド」に去り、「カインテス族」の祖となりました。- 新たな系譜と神の嘆き
その後、3人目の息子セツが誕生し、新たな人類の系譜が始まります。神は「本来は無垢な人間を創造したのに、女が蛇に従ったために罪が生じた」と語ります。
天使を罰した原典との違い
この物語は、創造主ジェホヴィによる人類創造の逸話に似ていますが、決定的に異なるのは、原典では罰されたのは人間ではなく天使だったという点です。しかも、天使たちは第6世代まで人間の子孫を見守る使命を課せられたのち、無事に昇天しています。
一方、デユスの物語では、「罪を犯したのは人間である」と定義されており、人類を「罪を背負って生まれた存在」とする構造が強調されているのです。
デユスの没落後に広まった「原罪」思想
この創作神話は、デユスの没落後も各地で独立した神々によって採用されていきました。結果として、人類は本質的に罪を持つ存在であるという思想、つまり後の「原罪」概念の原型となっていったのです。
このように、OAHSPEには創造主を偽った神々の系譜と、それに伴う教義の変遷が記録されています。それはただの神話ではなく、人類史の背後にある宗教的構造の再構成とも言えるでしょう。

出雲神話とOAHSPEを繋ぐ鍵とは?神と人間のつながりの再解釈
日本神話の原典とは
日本神話は、奈良時代に国家によって編纂された『古事記』(712年)と『日本書紀』(720年)に収録されています。いずれも政府公認の歴史書であり、さらに日本の天皇家が現代まで続いていることもあって、これら神話は今日に至るまで失われずに伝承されています。
『古事記』と『日本書紀』はわずか8年の差で成立しましたが、体裁は大きく異なります。『古事記』は物語的な構成、『日本書紀』は天皇の系譜を中心とした歴史記録という体裁をとっています。ただし、いずれも「神代」から始まるという点で共通しています。
今回は、『古事記』に記された神話の概要を見ていきます。
天地開闢と最初の神々
『古事記』は、天地開闢の段から始まります。最初に現れたのは三柱の神──天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神──であり、この世はまだ混沌とした水面のような状態でした。
続いて、宇摩志阿斯訶備比古遅神と天之常立神の二柱が現れ、あわせて五柱の神々が天地創造に関与する存在とされます。
この五柱の神々が大地の形を整えた後、新たに国之常立神と豊雲野神が生まれ、その後も次々と神々が出現します。泥土や砂、杭、家屋などを司る神々に続き、最後に誕生したのが男女の神──伊邪那岐神と伊邪那美神──でした。
伊邪那岐と伊邪那美の国生み神話
伊邪那岐と伊邪那美は、先代の神々から命を受けて「淤能碁呂島」を創造し、これが後の高天原となりました。そしてこの高天原で婚姻の儀を行いますが、初めに女神から声をかけたために不吉とされ、水蛭子という不完全な子が生まれます。
やり直しの後、正しい手順で求婚し直した2神は、次々と日本の島々を生みました。淡路島を皮切りに、四国、隠岐、九州、壱岐、対馬、佐渡、そして本州(秋津洲)が誕生します。
神の死と黄泉の国
その後、火の神・火之迦具土神を出産したことで伊邪那美は焼かれて死にます。伊邪那岐は怒り、火之迦具土神の首を斬り、その血からも神々が生まれたとされます。
妻を追って黄泉の国へ向かった伊邪那岐は、彼女に帰還を願いますが、「姿を見ないでほしい」と言われたにもかかわらず、彼女の変わり果てた姿を見てしまいます。伊邪那美は激怒し、千人の命を奪うと告げると、伊邪那岐は「ならば一日に1500人を生む」と返しました。二神が相対した場所「黄泉比良坂」は出雲国(現在の島根県)にあると記されています。
三貴子の誕生と須佐之男の放逐
その後、伊邪那岐神は天照大御神、月読命、建速須佐之男命の三柱を生み、それぞれに天上、夜、海の統治を命じます。しかし須佐之男命は任を果たさず、亡き母を想って泣き続けたため、地上は旱魃に見舞われました。
逆鱗に触れた伊邪那岐神は、須佐之男命を追放します。
須佐之男と天照の対立、そして大蛇退治
須佐之男命は高天原にいる姉・天照大御神を頼って向かいますが、天照は弟の野心を疑い拒絶。和解後、協力して神々を生むも、須佐之男の傲慢な振舞いが続き、ついには天照が天の岩戸に籠ってしまい、世界に闇が訪れます。
神々の機転により、天照は岩戸から引き出されますが、須佐之男命は再び追放されました。
その後、彼は出雲で櫛名田比売と出会い、彼女を狙う八俣の大蛇を退治。結婚し、彼らの子孫として出雲を治める大国主神が誕生します。
出雲と神の物語──OAHSPEからの視点
日本神話の核心的な舞台が「出雲国」であることは興味深い点です。伊邪那岐・伊邪那美が相対した場所も出雲であり、須佐之男命が身を置いた場所もまた出雲。そして、大国主命という強大な神が出雲から現れました。
この構造は、OAHSPEの神話とも呼応しています。たとえば、エジプトでは神オシリスが王に啓示を下す存在として描かれました。同様に、日本でも神と人の関係性を示すため、出雲という聖地を舞台に物語が編まれたと考えられます。
伊邪那岐神はデユス没落後の神か?
私は、伊邪那岐神はデユスの没落後、日本を統治した神ではないかと推測します。
紀元前2800年以降、各地で神々が独立し、天地創造神話を創作しました。しかし、その多くは紀元前1500年、いわゆる「ボン弧の夜明け」前に地獄へと堕ちていきます。
OAHSPEでは、オシリスもまた創作された妻(イシス)を持っていたとされます。伊邪那美神もまた、伊邪那岐の神格に対応する創作女神と見なせるかもしれません。
当初、この二神は日本の王統につながる存在として神話化されたのでしょうが、伊邪那岐が地獄に堕ちた後、物語は「大国主命の国譲り」へと書き換えられたものと考えられます。
この点については、次回詳しく見ていく予定です。

参考文献, 使用画像
図書 | 著者 | 出版社 |
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OAHSPE ”A New Bible in the Worlds of Jehofih and His angel embassadors.” | John B. Newbrough | OAHSPE PUBLISHING ASSOCIATION |
新版 古事記 現代語訳付き | 中村啓信訳注 | 角川学芸出版 |
古代エジプト全史 | 河合 望 | 株式会社雄山閣 |
画像:stable diffusion(model:epicRealism)より生成
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