創造主の名を奪った神々と世界の分断
『OAHSPE』によれば、この世界では神々の反乱が繰り返され、そのたびに「剪定」と呼ばれる悪の掃討が行われてきたとされています。
古代地球における最大の剪定は、パン大陸の水没でした。しかしその後も、地球では人間だけでなく神々までもが増長し、創造主の意に反する行動を取り続けました。そのたびに、さまざまな大天使が地上に降臨し、地球を浄化しながら次の時代へ向けた啓示を授けていったのです。

紀元前7000年頃、大天使でありオリアンの長でもあるフラガパッティが地球に降臨した際、当時の地球の神のひとり、イフアマズダは一人の伝道者を育てていました。その名はザラツゥストラ。彼は誕生の時から多くの苦難に見舞われますが、神イフアマズダの庇護のもとそれを乗り越え、神と共に地球最初の聖典――現在ゾロアスター教の聖典「アヴェスタ」として知られる書の原典――を編纂し、当時の社会に広めました。
ザラツゥストラの教えは、三つの柱から成り立っていました。
第一に、上天(涅槃)の創造主オーマズド(Ormazd/ジェホヴィ)が説く宇宙の理。
第二に、下天(地上世界)を管理し、正義や道徳を説く神イフアマズダの教え。
第三に、下天において人間がどう生きるべきかを教える、聖者ザラツゥストラ自身の教導です。
ところが、ザラツゥストラが非業の死を遂げ、その魂がフラガパッティとともに上天へと昇ってから数百年後、彼の教義は改変されてしまいます。
上天の存在は削除され、地球だけが唯一の世界であり、地球に生きる人間だけが唯一の人間であるとされるようになりました。
そして、その改変を行ったのが、かつては心清らかだった神アフラです。

アフラは、人類が闇に堕ちていく様子を見かね、「それならば、地球に闇が訪れないように、光の源である創造主を地球そのものに宿らせてしまおう」と考えました。
こうして、イフアマズダの名を借りて「アフラマズダ(A’hura-Mazda)」と名乗り、聖典から創造主オーマズドの名を削除し、自らを世界の創造主であり地球の最高神とする教義を打ち立てたのです。
これが、現在伝わっている「アヴェスタ」の原型となりました。
偽神アフラマズダの動機は、地球に闇をもたらさないという理想に基づいていましたが、結果的に地上にもたらされたのは戦乱でした。
それは、自らが創造主を名乗ったことで、真の創造主を信じる人々を粛正しなければならなかったからです。
こうして、アフラマズダが望んだ理想とは正反対の世界が現れてしまいました。
やがて、アフラマズダは自滅し、大天使クペンタアミジ(Cpenta-Armij)が降臨して地球は再び浄化され、新たな3,000年周期に入ることになります。
その後、アフラマズダは地獄に堕ちますが、やがて改心し、神アフラとして再び立ち上がる道を歩み始めます。
しかしその頃、アフラの腹心だった神アヌハサジ(Anuhasaj)は、かつてアフラが地球の創造主になろうとしたように、自らも世界の主となるべく反旗を翻しました。
これが、後に「千年戦争(Thousand-Year War)」と呼ばれる戦いの始まりです。
私の推定では、この戦争の勃発は紀元前3850年頃と思われます。
アヌハサジは「デユス(De’yus)」と名乗り、多くの腹心の神々を各地に派遣し、この世界から真の創造主の存在を消し去っていきました。
デユスの支配構造は非常に単純で、「自分こそが創造主である」とする教義を作り、それを腹心の神々を通じて広めていくというものでした。
しかし、これもまた宇宙の理に従うように、やがて腹心たちの反乱によってデユスは倒れ、地獄に堕ちていきます。
その後、各地に残された腹心たちはそれぞれ独立し、自分こそが世界の創造主であると主張し始めました。
これが「千年戦争」後の世界であり、その結果として世界各地に「地域ごとの創造神話」が広がっていったのです。
日本神話はどこから来たのか――偽神の影響とその起源
日本には古くから神話が伝わっており、それらは『日本書紀』や『古事記』といった官撰の歴史書に収録されています。
『日本書紀』によれば、国常立尊(くにとこたちのみこと)が日本の島々を生み出し、そこから神々の系譜が始まります。そして、その神々の末裔として、伊弉諾神(いざなぎのみこと)と伊弉冉神(いざなみのみこと)が登場し、彼らの子である天照大神(あまてらすおおみかみ)から多くの神々が生まれました。
その子孫たちは、日本各地の氏族の祖神として祀られるようになり、初代天皇とされる神武天皇は、天照大神の五世の後裔であると伝えられています。
こうした「日本と島国を創造した神がいた」という神話が、冷静に考えれば荒唐無稽であることは誰にでも分かることです。
では、なぜこのような神話が生まれたのでしょうか。

私はその背景として、紀元前2900年ごろに起きた「偽神デユスの自滅」と、それによって各地の神々が独立したという霊的な出来事が関係していると考えています。
当時、日本を統治していた神もその一柱であり、その神こそが「国常立尊」だったのではないかと推測しています。
国常立尊は自らを創造主と位置づけ、自分の霊的な血統から日本を統治する人間の王が生まれた、という神話を作り上げました。
日本という国は、現在の天皇家にまでその「王の血統」が連綿と受け継がれている、世界でも非常に珍しい国です。
そのため、古代に創作された神話であっても、長い年月を経て今なお、大切に語り継がれているのです。
東北に宿る太古の記憶――パン大陸とイヒン人の痕跡
さて、「1,000年戦争」の影響を受け、日本では国常立尊(くにとこたちのみこと)を創造主とする神話が確立し、それが現代まで語り継がれてきたことについては、すでに前段でお話ししました。
もちろん、日本という一国だけを創造した「創造主」が存在するとは考えにくく、この神話が創作であることは誰の目にも明らかでしょう。
しかし一方で、この神話が約5,000年もの間、受け継がれてきたという事実には、一定の価値があり、研究対象として非常に興味深いものだと言えるのではないでしょうか。

この神話において特に興味深いのは、創造主である国常立尊そのものよりも、現在の天皇家を生み出した「祖神」としての天照大神(あまてらすおおみかみ)への信仰が主軸になっている点です。
つまり、日本において信仰の対象となったのは創造主ではなく、王家の起源にあたる神であったということです。
そのため、日本では「創造主を祀る信仰」が、歴史的に見てもほとんど根付いてこなかったという背景があります。
しかし、例外もあります。実は、日本のある地域では、創造主への信仰が存在していました。
その手がかりを与えてくれるのが、江戸時代に編纂された『東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)』という書物です。
この書は、当時福島県田村郡三春町を治めていた三春藩が中心となって編纂した歴史書で、領主は秋田氏。
秋田氏はもともと安東氏の名で知られており、現在の秋田県を治めていた大名の一族です。
さらにさかのぼると、この安東氏は、古代に東北地方を支配していた安倍一族の末裔とされており、安倍一族は縄文時代から東北に根付いていた「荒吐族(あらばきぞく)」の血を引いているとも言われています。
荒吐族は「荒吐神」を信仰していたことでも知られていますが、興味深いのはその出自です。
『東日流外三郡誌』によれば、荒吐族は「阿蘇部族」と呼ばれる原住民と、後に渡来してきた「津保化族」との混血によって生まれた種族であるとされています。
ただし、この混血は自然に起こったものではなく、大きな災害により阿蘇部族が弱体化したことをきっかけに発生したと記されています。
同書には、次のような記述があります。
太古の世の十万年前,蒙古より阿蘇部族が日本国の北方に移住してきた。続いて津保化族が渡来した後,陸の大半が海底に沈む。
『東日流外三郡誌』総集篇歴抄 上巻(原本:東日流外三郡誌 1古代篇(上) (東日流中山史跡保存会編 八幡書店 刊))
この一文からは、「津保化族の渡来と同時期に、大規模な陸地の沈降があった」とも、「その沈降があったからこそ、津保化族が渡来した」とも読み取れます。
地震や津波では到底説明がつかない「陸の大半が海底に沈む」という現象が伝承されていることに注目し、私はこの「沈んだ大陸」とは、かの有名なパン大陸を指しているのではないかと考えています。
そして、津保化族とは、パン大陸の崩壊から逃れてイスタに渡った「イヒン人」であるという仮説に至りました。
残念ながら、日本ではこの『東日流外三郡誌』は「偽書」と見なされており、あまり研究の対象とはされていません。
その最大の理由は、この書が、かつて東北地方を支配していた安倍一族の恨みや憤りを多く記しているためではないかと推察しています。
とはいえ、この書を編纂した人々は、江戸時代に日本全国を巡り、各地の伝承を丹念に集めたと言われています。
確かに、荒唐無稽に思える話もありますが、それを一律に切り捨てるべきではないと私は考えています。
中には、遠い太古から口伝えで継承されてきた可能性のある内容も含まれており、そうした伝承を丁寧に拾い上げていくことが、私たち後代の人間の役割なのではないでしょうか。
パン大陸の水没や、『旧約聖書』の「ノアの方舟」や大洪水の物語は、日本神話の『古事記』や『日本書紀』ではなく、この『東日流外三郡誌』の中にこそ描かれている――。
そのこともまた、東北地方が「イスタに逃れたイヒン人たちが上陸した場所」であるという仮説の、ひとつの根拠となっているのです。
今後、『東日流外三郡誌』の記述や、阿蘇部族・津保化族、そしてそこから生まれた荒吐族の伝承を深く掘り下げながら、イスタに逃れたイヒン人の足跡をたどり、物語を紡いでいきたいと考えています。
参考文献, 使用画像
図書 | 著者 | 出版社 |
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OAHSPE ”A New Bible in the Worlds of Jehofih and His angel embassadors.” | John B. Newbrough | OAHSPE PUBLISHING ASSOCIATION |
聖書 新共同訳-旧約聖書 | 共同訳聖書実行委員会 | 三省堂印刷/日本聖書協会 |
東日流外三郡誌 1古代篇(上) | 東日流中山史跡保存会 | 八幡書店 |
画像:stable diffusion(model:XSMerge-RealisticVisionV3-ForArchi)より生成
掲載写真:つるが市木造亀ヶ岡考古資料室所蔵 亀ヶ岡遺跡出土土偶
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