【名言】善と悪の神々がいるならば、私たちは善を選び取らねばならない

テトラクトに支配される人間の心とその危険性

紀元前7,000年頃、ペルシア地方の中心都市オアスには、武勇で知られるソーチ王が君臨していました。ちょうどその時代に、ゾロアスター教の祖となるザラツゥストラが誕生します。

ソーチ王は迷信を嫌い、奇跡の噂を聞けば自ら確認しようとする人物でした。そのため、ザラツゥストラの母トーチェが処女受胎を語ったとき、学者であり義理の息子でもあったアシャを派遣し、事実確認を命じました。アシャは確かにザラツゥストラに神イフアマズダの臨在を感じ取り、その報告を王に届けました。

しかし、母子は神の導きによって町を去り、リスティア人の森へ逃れました。これを反逆とみなしたソーチ王は、すべての赤子を殺す命令を下しました。そこには自らの孫も含まれていたのです。アシャは王の親族として命を懸けて命令撤回を訴えましたが、王は面子を失うことを恐れ、決断を保留にしました。その結果、民衆の怒りは暴動に発展し、ソーチ王は殺されてしまいます。

神イフアマズダはこの一連の流れを「自らが直接命じたものではない」と述べます。王も民衆も、自らの意志と責任で動いたというのです。そして「テトラクトが支配的な力を持っていたため、神の声は届かない」と説明しています。

テトラクトとは、人の心を覆う負の要素を指します。代表的なものは以下の七つです。

  • アナシュ(Anash):頑なさ
  • ジンマ(Zimmah):邪悪な才覚
  • ラー(Ra):悪であることの喜び
  • ベリヤル(Belyyaal):無価値
  • アヴェン(Aven):虚栄、自惚れ
  • ディバー(Dibbah):中傷や悪意の言葉
  • サタン(Sa’tan):他の六つを扇動する存在

このような要素に支配されている人々には、神の声が届かないとされます。だからこそ神は、直接ではなく「予測される人間の行動」を織り込みながら、自らの計画を進めたのです。

この出来事から、私たちは「神に操られて動かされている」と考えるのではなく、自らの意志と責任が常に働いていることを学ぶべきです。そして現世でも、善人も悪人も存在するように、天界にも善なる神と偽りの神がいるのだと理解する必要があります。大切なのは、どちらの存在と関わるかを見極めることです。善良な人間や天使と結びつくことこそ、私たちが生き抜くための道だといえるでしょう。

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